水素の部品は、型と細い穴で決まる。
燃料電池のセパレータ金型と、チタン・ステンレスの細穴を、試作1個から放電加工で。
燃料電池や水電解装置の性能は、薄い金属板に刻まれた流路の精度で決まります。その流路をつくるのはプレス金型で、金型の細かな凹凸を焼入れ後の鋼に正確に彫るのは、放電加工が得意とする仕事です。高い圧力の水素を流す継手やバルブには、ステンレスやチタンに細い穴をあけ、内部で交差させる加工が欠かせません。愛知の放電加工専門工場として、開発段階の試作1個から、量産に向けた型と部品までお受けします。
- 図面1枚で可否と概算
- 営業時間内は当日中に返信
- 秘密保持契約に対応
- 試作1個から
これから水素の部品が増える3つの場面
水素は「つくる」「運ぶ・ためる」「使う」の3つの段階で、それぞれ新しい設備と部品を必要とします。どの段階にも、硬い材料や腐食に強い材料を、細かく正確に加工する工程があります。
燃料電池で走る車両
長い距離を走り、短い時間で燃料を補給したいトラックやバスで、燃料電池の導入が検討されています。車両が増えるほど、セルを積み重ねた燃料電池スタックの部品が必要になります。
水から水素をつくる設備
再生可能エネルギーの電気で水を分解する水電解装置は、セルの構造が燃料電池とよく似ています。電気分解の環境に耐えるよう、腐食に強いチタンの部品が多く使われます。
水素を運び、配る設備
水素ステーションや工場の配管では、高い圧力の水素を扱う継手やバルブが要ります。細い穴と交差穴の仕上がりが、漏れにくさに直結します。
燃料電池のセルの中で、セパレータが担う役割
燃料電池は、電解質の膜と電極を重ねた発電の層を、2枚のセパレータで挟んだセルを数百枚積み重ねてできています。セパレータは、水素と空気を電極の全面に配り、発電した電気を隣のセルへ伝え、冷却水の通り道もつくる部品です。
空気の流路水素の流路冷却水の流路金属セパレータガス拡散層触媒層電解質膜
金属のセパレータは、厚さ0.1mm程度の薄い板をプレスで波の形に成形してつくります。図は、溝の深さ約0.4mm・ピッチ約1.4mmを想定し、板厚との比率をそろえて描いています。ガス拡散層に接する側の溝に水素や空気が流れ、隣のセルのセパレータと裏側どうしを突き合わせてできる空間に冷却水が流れます。図の丸印は流路の位置を示し、流れは紙面と直角の方向です(それぞれの流れの向きの組み合わせは製品によって異なります)。
セパレータの流路は、金型の精度でつくられる
セパレータの溝の幅とリブの高さは、そのまま金型の凹凸の寸法になります。上型と下型は、板の厚さぶんのすき間を保ったまま、全面で正確に合わさらなければなりません。わずかなずれが、流路の詰まりや板の割れにつながります。溝の角には、薄い板が割れないよう小さな丸み(R)を付けます。板の内側と外側では丸みの半径が板厚ぶん違うため、上型と下型の角の丸みは同じ値にはなりません。
上型・下型成形したセパレータ放電加工で彫る型の面
細い溝を、焼入れ後に彫る
型は何万回ものプレスに耐えるよう、焼入れした硬い鋼でつくります。刃物が入りにくい細い溝も、電極の形を写して彫る形彫放電加工なら、焼入れ後の硬さのまま加工できます。
外形と穴は、ワイヤーで抜く
セパレータの外形や、ガスと冷却水の出入り口になる穴を抜く型は、ワイヤー放電加工でパンチとダイを製作します。硬い材料でも、輪郭どおりに切り出せます。
流路の変更に、早く追従する
開発の段階では、流路の幅や形を何度も変えて評価します。形彫放電加工は電極を作り直せば次の型に反映できるため、専用の刃物を待つ時間がかかりません。
セパレータの材質 カーボンと金属の違い
セパレータには、カーボン(黒鉛を樹脂で固めたもの)と金属(ステンレスやチタン)の2種類があります。どちらを選ぶかで、厚さも、つくり方も、必要な金型も変わります。
| 項目 | カーボンのセパレータ | 金属のセパレータ |
|---|---|---|
| つくり方 | 黒鉛と樹脂の材料を、型で押し固めて成形します | 薄い板を、プレス金型で波の形に成形します |
| 厚さ | 割れを防ぐため、ある程度の厚さが必要です | 0.1mm程度まで薄くでき、スタックを小さくできます |
| 腐食 | もともと腐食に強い材料です | 表面処理で腐食を防ぐ必要があります |
| 衝撃 | 割れやすく、振動の多い用途では注意が要ります | 割れにくく、車両のように振動のある用途に向きます |
| 放電加工の出番 | 成形に使う金型の、流路の凹凸を彫ります | プレス金型の凹凸と、外形・穴を抜く型を製作します |
流路の形には、1本の溝を折り返して全面に行き渡らせる蛇行型、何本もの溝を並べる平行型、溝の入口と出口を交互に分けるくし形などがあります。どの形を選ぶかで、ガスの行き渡り方と、発電で生じた水の抜けやすさが変わり、評価のたびに形を変えることになります。いずれの材質でも、流路の形は金型の凹凸で決まるため、型の精度と、形を変えるときの早さが開発の進み方を左右します。
放電加工が効く水素関連の部品
燃料電池・水電解・水素の配管で、放電加工の出番がある部品をまとめました。どれも、硬い材料か、腐食に強く削りにくい材料に、細かな形や細い穴をつくる部品です。
セパレータの成形金型
流路の凹凸を、焼入れ後の型に彫ります。開発中の流路形状の変更にも、電極の作り直しで追従します。
抜き型・穴抜きの型
セパレータの外形や、ガスの出入り口になるマニホールド穴を抜くパンチとダイを、ワイヤー放電加工で製作します。
水電解・燃料電池のチタン部品
腐食に強い一方で、切削では熱がこもりやすいチタンを、刃物を当てずに加工します。薄い部品にも力をかけません。
高圧継手・バルブの細穴
ステンレスの継手やバルブの本体に、φ1mm前後の細い穴を深くあけます。焼入れした材料や硬い材料でも同じです。
交差穴・オリフィス
穴と穴が内部で交わる部分は、刃物で押し出すかえりが残りやすい場所です。放電加工はかえりが出にくい加工です。
試験・評価用の治具と部品
単セルの評価に使う治具や、流量を確かめる試験部品など、1個だけ必要な部品も製作します。
水素の部品に使われる材料と、放電加工での扱い
水素の設備では、金属を脆くする水素脆化や、電気分解の環境での腐食に耐える材料が選ばれます。どれも切削では扱いにくい材料ですが、放電加工は電気を通す金属であれば、硬さや粘りに関係なく加工できます。
| 材料 | 使われる部品の例 | 放電加工での扱い |
|---|---|---|
| ステンレス(SUS316Lなど) | 水素用の継手・バルブ、金属セパレータ | 硬さに関係なく加工できます。細穴や交差穴に向きます |
| チタン・チタン合金 | 水電解の部品、セパレータ | 切削で熱がこもりやすい材料でも、刃物を当てずに加工します |
| 焼入れした型用鋼 | セパレータの成形型、抜き型 | 焼入れ後に彫るため、熱処理の歪みを型に持ち込みません |
| 超硬合金 | 寿命を延ばしたい型のパンチ・入れ子 | ドリルや刃物では削れない硬さでも加工できます |
| インコネルなどの耐熱合金 | 高温になる部分の部品 | 難削材の代表ですが、放電加工では硬さを問いません |
※電気を通さない材料(樹脂、セラミックス、樹脂で固めたカーボンの成形品など)は、放電加工では加工できません。
細い穴は、ドリルと放電加工をこう使い分けます
細い穴が難しくなるかどうかは、穴の直径よりも、直径に対する深さの比で決まります。浅い穴はドリルのほうが速く安く、深い穴や硬い材料の穴は放電加工が向いています。
| 条件 | ドリル | 細穴放電加工 |
|---|---|---|
| 浅い穴(深さが直径の5倍程度まで) | 速く、安い。第一の選択肢です | 対応できますが、時間はかかります |
| 深い穴(深さが直径の10倍以上) | 刃が折れる、曲がる危険が増えます | 得意な領域です |
| 焼入れした材料・硬い材料 | 刃が負けて、あけにくくなります | 硬さに関係なく加工できます |
| 穴が内部で交差する部分 | 出口に刃物のかえりが出やすい | かえりが出にくい加工です |
| 加工の速さ | 速い | 遅い。必要な穴だけに使うのが合理的です |
細穴の考え方は、細穴放電加工の記事で、径と深さの関係から詳しくまとめています。
対応できる精度と大きさ
| 項目 | ワイヤー放電加工 | 形彫放電加工 |
|---|---|---|
| 寸法精度の目安 | ±0.01〜0.03mm | ±0.01mmクラス |
| 仕上げ面 | Ra0.1μm程度の平滑面から梨地面まで、用途に応じて指定できます | |
| 最大ワーク | 820×730×300mm | 1,200×800×450mm |
| 細穴 | — | φ1mm前後が中心。深さ350mmの加工実績があります |
| 焼入れ材 | HRC60以上の実績が多数あります。硬さで精度は落ちません | |
先にお伝えしておくこと。±0.01mmより厳しい公差、完全なピン角(R0)、電気を通さない材料は、放電加工だけでは対応できません。
試作の1個から、量産の型まで
水素の設備は、まだ開発と試作の段階にあるものが多く、形を変えながら評価を繰り返します。試作を受けた工場が量産まで続けて担えると、型や部品の作り方を一から伝え直す手間が省けます。
- STEP 01試作1個形と組み付けを確かめる段階です。図面1枚、CADデータ1つから製作します。
- STEP 02評価のための数十個流路や穴の形を変えながら評価します。変更は電極や加工データの差し替えで追従します。
- STEP 03量産に向けた型形が固まったら、寿命と精度を見込んだ量産用の型と部品に移ります。
- STEP 04継続して供給複数台体制で供給を止めません。秘密保持契約と、加工データの提出にも対応します。
見積りのときに送っていただくもの
全部そろっていなくても構いません。分かる範囲で送っていただければ、足りない情報はこちらからお尋ねします。
- 図面(PDF・DXF・STEPなど)
- 材質と、熱処理後の硬さ
- 数量(試作の個数と、量産の見込み)
- 希望の納期
- 公差と面粗さの指定
- 細穴の径・深さ・交差の位置
- 型の場合は、成形する板の材質と厚さ
- 使用条件(圧力・温度・流す流体)
ご依頼の流れ
- STEP 01図面を送るお問い合わせフォームに、図面やCADデータ、写真を添付してください。
- STEP 02可否と概算を返信営業時間内であれば当日中に、加工できるかどうかと概算をお返しします。
- STEP 03秘密保持契約と正式見積り必要に応じて秘密保持契約を結び、正式なお見積りをお出しします。
- STEP 04加工・検査・出荷通常は1週間前後、特急は2〜5日が目安です。形状と数量で変わります。
よくあるご質問
開発中の部品で、図面がまだ固まっていません。相談できますか?
できます。構想の段階でも、スケッチやCADのデータ、写真からご相談いただけます。開発中の製品については、秘密保持契約を結んだうえで進めます。
セパレータの金型を、試作の1型から頼めますか?
お受けします。流路の形を変えるときは、電極を作り直して次の型に反映します。量産に向けた型の構成や、何型目から何を変えるかもあわせてご相談ください。
チタンやSUS316Lも加工できますか?
できます。放電加工は電気を通す金属であれば、硬さや粘りに関係なく加工できます。刃物を当てないため、薄い部品や変形しやすい部品にも力がかかりません。
φ1mmより細い穴はあけられますか?
当社の細穴加工はφ1mm前後が中心です。それより細い穴や、径に対して特に深い穴は、図面を拝見したうえで可否をお答えします。
秘密保持契約は結べますか?
はい。開発中の製品のご相談が多いため、秘密保持契約の締結に対応しています。必要に応じて、加工データの提出にも対応します。
試作のあと、量産も対応できますか?
対応します。月産数千個の規模では、放電加工機を専用ラインとして確保し、多数個取りの治具で効率化します。数量によっては専用機の加工のほうが安くなる場合もあり、そのときは正直にお伝えします。
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