「超硬合金やタングステンの部品を加工したいが、対応してくれる工場が見つからない」——このご相談は、当社にお寄せいただくお問い合わせの中でも上位を占めます。
超硬合金やタングステンは、HRA88〜93(HV1,300〜2,000)という極めて高い硬度を持つため、通常の切削加工では刃物が持ちません。しかし、放電加工であれば硬度に関係なく、ミクロン単位の精度で加工が可能です。
この記事では、超硬・タングステンの加工が難しい技術的な理由と、放電加工がなぜその課題を解決できるのかを解説します。
タングステンと超硬の硬度(HV・HRA・HRC)
先に結論だけ示します。純タングステンはHV 300〜500、超硬合金はHV 1,300〜2,000(HRA 88〜93)です。同じ「タングステン」と呼ばれていても、この2つは硬さが4倍ほど違い、加工方法も変わります。切削できるかどうかの分かれ目は、この数値にあります。
| 材料 | HV(ビッカース) | HRA | HRC | 切削の可否 |
|---|---|---|---|---|
| 純タングステン(軟らかめ) | 300 | — | 約30 | 条件を選べば可能 |
| 純タングステン(硬め) | 500 | 約76 | 約49 | 可能だが工具摩耗が早い |
| 参考:焼入れした鋼 | 600〜750 | 約80〜84 | 約55〜62 | 専用工具なら可能 |
| 超硬合金(一般) | 1,400 | 約89 | 測定不可 | 切削は困難 |
| 超硬合金(微粒子系) | 1,800 | 約92 | 測定不可 | 切削は困難 |
換算値はJIS Z 2244等の対応表に基づくおおよその目安です。材料によって換算のずれが生じるため、厳密な硬さ管理が必要な場合は実際に使用するスケールで直接測定してください。
HRCスケールはHV 940(HRC 68)付近が測定上限で、超硬合金の硬さ領域は測れません。超硬部品の図面で硬さを指定する場合は、HRAまたはHVで記載してください。HRCで指示されていると受入検査が成立せず、後工程で問題になります。
なぜ超硬は切削で削れないのか
安定して切削するには、一般に工具の硬さが被削材の1.3〜1.5倍程度必要とされます。超硬工具の硬さはHV 1,500前後。これで被削材のHV 1,800の超硬合金を削ろうとすると、工具のほうが柔らかいことになり、削るより先に刃先が欠けます。これが「超硬は削れない」と言われる理由です。
一方、放電加工は工具を当てずに放電の熱で溶かして取り除く方法です。電極には銅やグラファイトといった柔らかい材料を使いますが、硬さは加工結果に影響しません。条件は「電気を通す材料であること」だけで、超硬合金はこれを満たします。硬いから加工できない、という制約が放電加工には無いのです。
HV・HRA・HRCの換算表、炭化タングステン単体との違い、他の難削材との比較、硬さから加工方法を判断する手順は、タングステンと超硬の硬さデータ|HV一覧と加工可否の判断基準で詳しく整理しています。
超硬合金・タングステンとは
硬さが分かったうえで「どの工法で、いくらで、どこに頼めるのか」を知りたい場合は、タングステン加工の方法・費用・依頼先で、放電加工・研削・レーザーの3工法の比較と費用の目安をまとめています。
超硬合金の最大硬度 ── 切削工具の材質と同等以上
超硬合金(Cemented Carbide)
タングステンカーバイド(WC)の微細粒子をコバルト(Co)やニッケル(Ni)などのバインダー金属で焼結した複合材料です。
HRA 85〜93(HRC換算 70〜90+)
極めて高い硬度と耐摩耗性。靭性は鋼に劣り衝撃で割れやすい
金型(プレス型・絞り型)、切削工具、耐摩耗部品、測定用ゲージ
純タングステン(Pure Tungsten)
融点3,422℃と全金属中最高で、高温でも強度が低下しにくい金属です。
HV 300〜500(展延性が極めて低い)
高融点・高密度(19.3g/cm³ ≒ 金)・脆い
半導体製造装置部品、放射線遮蔽材、電気接点、ヒーター
切削加工で難しい4つの技術的理由
硬度が高すぎて刃物が摩耗する
超硬合金の硬度はHRA90台に達することがあり、これは切削工具そのものの材質と同等以上の硬さです。「硬いものを硬いもので削る」状態になるため、工具が急速に摩耗し、実質的に加工できない状態になります。ダイヤモンドコーティング工具を使えば一部の加工は可能ですが、工具コストが非常に高くなります。
脆くて割れやすい
超硬合金もタングステンも靭性が低く、衝撃に弱いという特性があります。切削加工では工具がワークに断続的に接触するため、切削力による衝撃でワークがチッピング(欠け)や割れを起こすリスクが高くなります。
加工熱の管理が困難
超硬合金は熱伝導率が鋼に比べて高いものの、切削加工時の局所的な発熱は避けられません。タングステンは室温では脆いですが高温では変形しやすくなる特性があり、加工中の温度管理が難しいという問題があります。
加工できる形状が限られる
仮にダイヤモンド工具で切削可能であっても、複雑な3次元形状、深い止まり穴、鋭いコーナーなどは工具のアクセスや剛性の制約で加工できないことが多くなります。
放電加工がこれらの課題をすべて解決します
放電加工が超硬・タングステンに有効な理由
硬度は関係ない
放電加工は電気の放電エネルギーで金属を溶融除去するため、ワークの硬度は加工の可否に影響しません。HRA90の超硬合金も、HRC20の軟鋼も、同じ原理で加工できます。必要な条件は「電気を通すこと(導電性があること)」だけです。超硬合金もタングステンも導電性を持つため、問題なく放電加工が可能です。
非接触加工で割れを回避
放電加工は電極とワークが直接接触しない非接触加工です。切削力がゼロのため、脆い超硬合金でもチッピングや割れのリスクが極めて低い状態で加工できます。
複雑形状にも対応
形彫放電加工であれば、電極の形状をワークに転写する原理のため、3次元の自由な形状・深穴・止まり穴・鋭いコーナーも加工可能です。切削工具のアクセス制約を受けません。
超硬加工における電極選定のポイント
超硬合金の放電加工では、電極材質の選定が加工品質を大きに左右します。
| 電極材質 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 推奨銅タングステン(CuW) | 電極消耗が少なく、高精度仕上げ向き | 超硬合金の仕上げ加工、微細加工 |
| 推奨銀タングステン(AgW) | 銅タングステンより導電率が高く、消耗が少ない | 超硬合金の精密加工、電極消耗を最小化したい場合 |
| 銅(Cu) | 汎用的で入手しやすい。加工性が良い | 一般的な鋼材の形彫。超硬には消耗が大きくなる場合あり |
| グラファイト | 大型電極の製作が容易。荒加工に強い | 大面積の荒加工。超硬には条件設定に注意が必要 |
当社の強み:銅タングステン・銀タングステン電極材を常時ストック。在庫を持たない工場も多い中、入荷待ちなしで即座に加工に取りかかれます。
超硬・タングステン加工で放電加工を依頼する際の注意点
例:超硬V20、V30、バインダーレスなど。バインダー(Co)の含有率によって加工条件が変わります。
設計段階でご相談いただければ、加工性を考慮したアドバイスが可能です。
超硬合金は放電加工後の表面に白層が生じます。除去が必要な場合はラップ加工等の後工程が必要になるため、事前にご相談ください。
よくあるご質問
タングステンの硬度はHRCでいくつですか?
純タングステンの硬さはHV 300〜500で、HRCに換算するとおおよそHRC 30〜49です。焼入れした鋼(HV 600〜750=HRC 55〜62程度)より柔らかく、条件を選べば切削もできます。
一方、工具や金型に使われる超硬合金はHV 1,300〜2,000と桁違いに硬く、こちらはHRCでは測定できません。HRCスケールはHV 940(HRC 68)付近が測定上限のためで、超硬の硬さはHRA 88〜93で表します。「タングステン=非常に硬い」というイメージは、この超硬合金と混同されて広まったものです。
タングステンと超硬合金は何が違いますか?
純タングステンは元素そのものの金属、超硬合金は炭化タングステン(WC)の粉末をコバルトなどで固めた複合材料です。名前が似ているため混同されますが、性質は大きく異なります。
純タングステンの特徴は硬さではなく、融点3,653K(約3,380℃)という全金属中で最高の耐熱性と、鉄の約2.5倍にあたる密度19.3 Mg/m³の重さです。対して超硬合金は硬さが持ち味で、その硬さゆえに切削工具や金型に使われます。加工方法を判断するときは、どちらの材料なのかをまず確認してください。
HRA90は、HVやHRCに換算するといくつですか?
HRA 90はHV 1,500前後に相当し、超硬合金の一般的な硬さの範囲に入ります。HRCへの換算はできません。HRCの測定上限がHV 940(HRC 68)付近であり、HRA 90はその範囲を大きく超えているためです。
換算値はJIS Z 2244等の対応表に基づくおおよその目安です。材料によってずれが生じるため、厳密な硬さ管理が必要な場合は実際に使用するスケールで直接測定してください。
超硬合金は切削加工できますか?
実用的には困難です。安定して切削するには、一般に工具の硬さが被削材の1.3〜1.5倍程度必要とされます。超硬工具の硬さはHV 1,500前後ですから、HV 1,800の超硬合金を削ろうとすると工具のほうが柔らかく、削るより先に刃先が欠けます。
ダイヤモンド工具を使えば削れる場合もありますが、超硬は脆いため加工中に欠けや割れが生じやすく、形状も限られます。放電加工であれば工具を当てないため、硬さも脆さも制約になりません。
図面に「HRC60以上」と指示された超硬部品は作れますか?
加工自体は可能ですが、その硬さ指示は検査が成立しません。前述のとおりHRCスケールは超硬合金の硬さ領域を測定できないためです。
超硬部品の硬さを指定する場合は、HRAまたはHVで記載してください。図面がHRC表記のままだと受入検査で判定できず、後工程で問題になります。図面をお送りいただければ、この種の指示の食い違いも含めて確認したうえでご回答します。
超硬・タングステンの加工は1個から依頼できますか?
1個からお受けしています。試作の1個でも、継続的な数物でも対応可能です。他社で「硬すぎて削れない」と断られた案件も、放電加工であれば加工できる場合が多くあります。
お見積りは無料で、図面がなくても現物やスケッチからご相談いただけます。硬さや形状から加工の可否を判断しますので、まずはお問い合わせフォームからご連絡ください。
まとめ
超硬合金やタングステンは、切削加工では「硬すぎて削れない」「割れてしまう」という根本的な課題がありますが、放電加工であれば硬度に関係なく、非接触で、高精度に加工可能です。
当社ギャップ・イーディーエム(GAP.EDM)は、超硬合金の放電加工を40年以上にわたって手がけてきた専門工場です。銅タングステン・銀タングステン電極の常備、超硬加工に最適化した加工条件データベースの蓄積により、安定した品質をお約束します。
超硬加工の専門実績
JUDGE
切削で断られた超硬・タングステン、放電なら削れます
放電加工に硬さの上限はありません。工具が当たらないため、材料が硬いほど有利になる場面すらあります。条件は電気を通すことだけです。
対応できる材料
- ・超硬合金 HRA88〜93
- ・タングステン HV300〜500
- ・焼入れ鋼 HRC58〜62/ハイス HRC63〜66
- ・インコネル、ハステロイ、チタン合金
- ・ステンレス、炭素鋼などの導電性材料
対応できないもの
- ・セラミックス・ガラス(電気を通さないため)
- ・樹脂・ゴム
- ・ピン角(R0)の指示。原理上Rが残ります
- ・アルミ・銅は加工可能ですが、切削のほうが速い場合があります
他社で断られた図面こそ、送ってください。
「硬すぎて削れない」「工具がもたない」と言われた案件を日常的に扱っています。加工できるか・どの方式が適するか・おおよその納期をお答えします。図面がなければ現物の写真で構いません。当社で対応できない場合も、その旨をはっきりお伝えします。
判定は無料
写真でもOK
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営業時間内の受付分
硬さは不問
条件は導電性のみ
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問い合わせ後も
対応内容は超硬・タングステン加工のページ、硬さの換算は硬さ完全データをご覧ください。
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