その部品、放電加工で作れるのか。
できること・できないことを正直に。
「切削では削れないと言われた」「この形状は無理だろうか」——放電加工を検討するとき、最初に知りたいのは自分の部品が対象になるのかです。この記事では、愛知県尾張旭市で40年放電加工を専門にしてきた工場が、できることだけでなくできないこと・苦手なことも含めて判断基準を公開します。
大前提:判断を分ける唯一の条件は「電気を通すか」
放電加工は、電極とワークの間に火花(放電)を飛ばし、その熱で材料を溶かして削り取る加工です。したがって電気を通さない材料は原理的に加工できません。ここが最初にして最大の分かれ道です。
加工できる:導電性のある材料
鉄鋼・ステンレス・アルミ・銅・チタン・インコネルなどの金属全般に加えて、超硬合金(タングステンカーバイド)も対象です。焼入れ後の高硬度材でも問題ありません。導電性を持たせたセラミックスも条件により加工できる場合があります。
加工できない:絶縁体
一般的なセラミックス・樹脂(プラスチック)・ガラス・ゴム・木材は電気を通さないため放電加工の対象外です。図面をいただいても加工できないため、この場合は正直にお断りし、可能であれば適した工法をご案内しています。
放電加工だからできること(切削では難しい5領域)
導電性さえあれば、放電加工は切削が苦手な領域を得意とします。工具がワークに触れず、力もかからないため、常識が変わります。
① 硬い材料をそのまま加工できる
焼入れ鋼・超硬・インコネルなど、切削工具が摩耗して歯が立たない材料でも硬さは関係ありません。熱処理後の完成硬度のまま最終形状を出せるため、熱処理による歪みを心配せずに済みます。→ 難削材の放電加工
② 角が立った四角穴・異形穴
回転工具では原理的に内側の角が丸くなりますが、放電加工は電極の形状がそのまま転写されるため、ピン角に近い四角穴・六角穴・キー溝が加工できます。
③ 深く細い穴・リブ
直径に対して非常に深い穴や、細く深いリブ形状。ドリルや工具が折れる領域でも、放電なら加工できます。当社では長さ900mmのシャフトに深さ350mmの深穴という実績があります。→ 深穴・細穴放電加工
④ 薄物・弱い部品を変形させずに加工
電極はワークに接触せず、加工中に大きな力がかかりません。そのため薄板や剛性の低い部品でも押されて歪むことがないのが強みです。
⑤ 折れ込んだ工具の除去
母材を傷めず、折れ込んだタップやドリルだけを溶かして除去できます。詳しい方法は折れたタップの取り方・除去方法5選で解説しています。工具鋼と母材の硬さの差に関係なく処理できる、放電加工ならではの救済です。
正直に書く:放電加工が「できない・苦手」なこと
万能ではありません。以下に当てはまる場合、他工法をおすすめするか、組み合わせをご提案します。ここを最初にお伝えするのが、結果的にお互いの時間を節約します。
| 項目 | 実際のところ | 現実的な対処 |
|---|---|---|
| 絶縁体は不可 | セラミックス・樹脂・ガラスなどは原理的に加工できません | 切削・研削・レーザーなど別工法をご案内します |
| 加工速度は速くない | 削り取る量が多い加工では、切削のほうが圧倒的に速いことがあります | 粗加工は切削、仕上げや不可能形状だけ放電という工程分担が定石です |
| 電極の製作が必要(形彫) | 形状に応じた電極を作る工程とコストが加わります | 数が少ない場合はワイヤーや細穴など電極不要の方式を検討します → 電極設計の解説 |
| 加工面に変質層ができる | 放電の熱で表面にごく薄い変質層(白層)が生じます | 仕上げ条件の調整や、必要に応じ研磨など後工程で除去します |
| 大量生産の単純形状は不向き | 単純な丸穴を大量にあけるだけなら、ドリルのほうが速く安価です | 放電が必要な工程だけ切り出してお受けします → 量産・工程請負 |
| ワークの大きさに上限 | 加工槽に入らないサイズは物理的に加工できません | 当社は加工槽1,200×800mmの大型機3台を保有 → 大型・厚物の放電加工 |
「できるが、割に合わない」という第3のケースもあります。技術的には可能でも、加工時間が長くコストが見合わない場合です。当社では可否だけでなく、その加工が現実的かどうかも含めて正直にお伝えします。
3つの方式、どれが自分の部品に合うのか
「放電加工」とひとくちに言っても中身は3種類あり、できる形状が違います。図面を見れば私たちが選定しますが、目安を知っておくと相談がスムーズです。
| 方式 | 得意な形状 | 電極 | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| 形彫(かたぼり)放電加工 | 止まり穴・彫り込み・角穴・深リブなど「掘る」形状 | 形状に合わせた銅・グラファイト電極が必要 | 金型のキャビティ、角穴、キー溝、折れ込み工具の除去 |
| ワイヤー放電加工 | 板を糸ノコのように切り抜く貫通形状 | 細いワイヤーを使うため専用電極は不要 | 打抜き型の刃、歯車・スプライン、外形の切り出し |
| 細穴放電加工 | 小径で深い穴(φ0.3mm前後〜) | 中空のパイプ電極 | 冷却孔、ワイヤーのスタート穴、ノズル類 |
実務では組み合わせが有効です。たとえば細穴でスタート穴をあけ、ワイヤーで切り抜き、形彫で仕上げるといった流れ。3方式を自社に揃えている工場なら、この判断と工程分担を一括で任せられます。詳しい比較は形彫とワイヤーの違いもご覧ください。
「できる」と「頼むべき」は違う——コストと時間の判断軸
技術的に可能でも、必ずしも放電加工が最適解とは限りません。私たちが実際に使っている判断の目安を公開します。
- 放電加工機は買うべきか外注か|コスト比較と判断基準
- 削り取る量が多いなら、まず切削——素材から大きく削り出す工程は切削が速く安価です。放電は「切削でできない部分」に絞るほど費用対効果が上がります。→ 放電加工と切削加工の違い
- 硬さが理由で断られたなら、迷わず放電——焼入れ後・超硬・インコネル。ここは放電の独壇場で、他工法より結果的に安く早いことが多い領域です。
- 単品・試作なら放電が有利なことが多い——金型を起こさずに形状が出せるため、1個からでも現実的なコストになります。
- 費用は「加工時間」でほぼ決まる——材料費より機械を何時間使うかが支配的です。公差を必要な箇所だけ効かせると、コストは大きく変わります。→ 放電加工の費用相場
相談時に伝えると判定が早い6項目
すべて揃っていなくても構いません。分かる範囲で添えていただければ、その日のうちに可否をお答えできます。
- ① 材質——これが最重要。導電性の有無で結論が決まります。不明なら「金属かどうか」だけでも構いません。
- ② 熱処理の有無——焼入れ前か後か。放電は焼入れ後の加工が得意です。
- ③ 加工したい箇所と形状——貫通か止まりか、深さはどれくらいか。写真に印をつけていただくのが最速です。
- ④ 効かせたい公差——全面を厳しくするとコストが跳ねます。「ここだけは」を教えてください。
- ⑤ ワークの外形寸法と重量——加工槽に入るかの判断に使います。
- ⑥ 数量と希望納期——1個か量産かで最適な方式が変わります。
図面がなくても大丈夫です。スマホで撮った写真と寸法メモがあれば、可否の判断はできます。
愛知・東海エリアの方は「現物を持ち込む」のが最短です
可否の判断がつかない部品は、図面より現物を見るほうが早いことがよくあります。愛知県尾張旭市の当社工場へ持ち込んでいただければ、その場で加工方法と目安をお伝えできます。
- お引き取り・納品に対応——名古屋市・瀬戸市・春日井市・長久手市・日進市・豊田市など愛知県内および近隣エリア。重量物やトラブル品ほど、直接お預かりするほうが確実です。
- 岐阜・三重も対応エリア——東海三県は実質同じ距離感です。急ぎの場合はお電話ください。
- 工場への持ち込み歓迎——「これ加工できますか」と現物を持って来ていただくのが、最も早い判定方法です。
- 遠方の方は全国発送で対応——宅配便でお送りいただければ同じ品質・スピードで加工します。
エリアや依頼の流れは放電加工の外注なら愛知の専門工場へ(東海三県対応)、外注先の選び方は愛知・東海の放電加工会社の選び方で詳しく解説しています。
よくある質問
樹脂やセラミックスは放電加工できませんか?
硬すぎて切削で断られた部品でも加工できますか?
加工面はどんな状態になりますか?
図面がなくても相談できますか?
大きすぎる部品は加工できませんか?
放電加工より安い方法があれば教えてもらえますか?
その部品が加工できるか、無料で判定します
「これは放電加工の対象なのか」——迷った時点でご相談ください。材質と形状が分かれば、可否・最適な方式・概算を営業時間内は当日中にお返しします。できない場合はその理由と、可能であれば代わりの工法もお伝えします。
形彫放電加工歴40年・累計3,000件超。しつこい営業は一切しません。

