スタッドボルトが折れたら、ドリルを当てる前に。
折れた高さで、取れる方法も費用も変わります。
エキゾーストマニホールドやマフラーのフランジ、シリンダーヘッドのスタッドボルトは、熱と錆で固着しやすく、外そうとした拍子に折れることの多いボルトです。折れた位置が表面より上なら、自分で外せる見込みがあります。表面と同じ高さや穴の奥で折れて、逆タップでもドリルでも取れないときは、放電加工でボルトだけを溶かし、アルミのねじ山を残して取り除きます。外した部品だけを宅配便で送っていただければ、全国から対応します。
- 写真1枚で可否と費用の目安
- 営業時間内は当日中に返信
- 部品だけ送ればOK
- 全国から宅配便で対応
まず、折れた高さを見てください
スタッドボルトの外し方は、折れた位置で決まります。ペンライトで穴をのぞき、折れた面が部品の表面より上にあるのか、同じ高さなのか、奥に沈んでいるのかを確かめてください。この見極めを飛ばして道具を当てると、取れるはずだったものが取れなくなります。
折れて残ったスタッドボルト部品(母材)とめねじ
| 折れた位置 | 主な外し方 | 自分で外せる見込み | 失敗したときのリスク |
|---|---|---|---|
| A|表面より上 | ダブルナット、スタッドプーラー、プライヤー、ナットを溶接して回す | 高い。つかめる長さがあるうちが勝負です | 無理に回すと、さらに短く折れてBになる |
| B|表面と同じ高さ | 中心にセンターポンチを打ち、下穴をあけて逆タップ | 条件しだい。固着が強いと逆タップが負けます | 下穴が中心からずれる、逆タップが中で折れる |
| C|穴の奥 | 工具が届かず、手作業での除去はほぼ困難 | 低い | ドリルで追うほど、母材のねじ山を削ってしまう |
スタッドボルトが折れやすい3つの理由
スタッドボルトは、両端にねじが切られた棒状のボルトです。片側を部品のねじ穴に植え込んだまま使い、反対側にナットを締めて相手の部品を留めます。整備のたびに外すのはナットだけなので、アルミのねじ山を何度も締め外しせずに済みます。その代わり、植え込んだ側は何年も外さないため、固着が進みやすい部品でもあります。
折れたのは、力の入れ方が悪かったからとは限りません。排気系のスタッドボルトには、もともと折れやすい条件がそろっています。
熱の繰り返し
排気系は運転のたびに数百度まで上がり、止めると冷えます。膨張と収縮を何度も繰り返すうちに、ねじ山に酸化した皮膜が入り込み、ボルトと母材が一体のように固まります。
異なる金属の組み合わせ
シリンダーヘッドはアルミ、スタッドボルトは鉄、という組み合わせがよくあります。熱の伸び方が違ううえ、水分があると接触面で腐食が進み、ねじ山どうしが食いつきます。
錆と締め付けの残り
下回りのマフラーは雨水と融雪剤にさらされます。錆で細くなったボルトに、外すときのねじりの力がかかると、ねじ山の根元から折れます。
折れていると、こんな症状が出ます
エキゾーストマニホールドやマフラーのスタッドボルトが折れたり、ナットが抜け落ちたりすると、フランジの合わせ目にすき間ができて排気が漏れます。次のような症状があれば、まずボルトの状態を確かめてください。
- エンジンをかけた直後に、カタカタ・プシュプシュという音がする
- 音がエンジンの回転に合わせて大きくなる
- フランジのまわりに、黒いすすの跡が付いている
- ナットだけが脱落して、ボルトの先が見えない
- 排気のにおいが車内やエンジンルームでする
- 以前にボルトを交換した部位から、また音がする
排気漏れは、ガスケットの劣化だけでも起きます。ボルトが折れているかどうかは、フランジを外して確かめてください。
自分で外すなら、この順番で
折れた位置がAか、Bでも固着が軽い場合は、次の順番で試してください。上から順に、母材を傷める危険の小さい方法です。ひとつ失敗するたびに、次の方法の成功率は下がっていきます。
- STEP 01浸透潤滑剤をしみ込ませ、時間を置くねじ山のすき間に浸透潤滑剤を吹き付け、ひと晩置くのが基本です。軽く叩いて振動を与えると、奥まで入りやすくなります。
- STEP 02周囲を温めて、固着をゆるめるボルトのまわりの母材を温めると、膨張でわずかにすき間ができます。アルミのヘッドは温めすぎると変形します。ガスバーナーで一点をあぶり続けるのは避けてください。
- STEP 03つかめるなら、つかんで回す突き出しが残っていれば、ナットを2個締め合わせるダブルナットや、スタッドプーラーで回します。ゆるめる方向に一気に回さず、締める方向と交互に少しずつ動かします。
- STEP 04ナットを溶接して回す突き出しにナットを溶接すると、溶接の熱でも固着がゆるみます。整備工場でよく使われる方法です。表面と同じ高さまで折れていると、溶接が母材に付いてしまいます。アルミの母材には向きません。
表面と同じ高さで折れたときに、自分で挑戦するなら。まず折れた面の中心に、センターポンチで小さなくぼみを付けます。ここが片寄ると、後の作業がすべて片寄ります。下穴は細いドリルから始め、中心がずれていないかを確かめながら、少しずつ太くします。左回りに回る左刃ドリルを使うと、穴をあけている途中でボルトが一緒に回って抜けてくることがあります。
ドリルの刃が滑って進まない、あるいは片側に寄っていくと感じたら、そこで止めてください。焼けて硬くなっているボルトは、それ以上追うと母材だけが削れていきます。
逆タップは最後の手段です。逆タップは、ボルトに下穴をあけて差し込み、逆方向に回して抜く工具です。焼入れされていて非常に硬い一方、折れやすい道具でもあります。固着したスタッドボルトに力任せに使うと、逆タップごと中で折れ、ドリルでも削れない状態になります。
逆タップが折れたときの取り方は、逆タップが折れて抜けない時の取り方にまとめています。
この状態でやってはいけないこと
中心がずれたまま、ドリルで追う
焼けて硬くなったボルトにドリルを当てると、刃は柔らかいアルミの側へ逃げます。下穴が片寄ると、母材のねじ山を削り取ってしまいます。
逆タップを、力任せに回す
手ごたえが重いまま回し続けると、逆タップがねじれて折れます。重いと感じた時点で止めるのが、結果的にいちばん安く済みます。
同じ穴に、何度も挑戦する
ポンチ、ドリル、逆タップと方法を変えるたびに、穴は広がり、残った部分は硬くなります。2回失敗したら、その状態のまま相談するのが近道です。
放電加工なら、ボルトだけを溶かして抜けます
放電加工は、電極と材料のあいだに細かな火花を飛ばし、その熱で金属を少しずつ溶かす加工です。刃物で削るのではないため、焼けて硬くなったボルトでも、焼入れされた逆タップでも、硬さに関係なく加工できます。
電極スタッドボルト部品(母材)
電極は、ねじの内径よりわずかに細く作ります。電極を折れたボルトの中心に合わせて沈めていくと、ボルトの芯だけが溶けてなくなり、母材のねじ山には火花が届きません。最後に残った薄い皮のような部分を取り除くと、元のねじ山が出てきます。ドリルのように刃が逃げることがないので、下穴が片寄ることもありません。
修理費用・工賃の決まり方
スタッドボルトの除去費用は、作業の時間で決まります。同じ1本でも、ボルトの太さと折れた深さ、材質、部品の大きさによって手間が変わるためです。当社にご依頼いただく場合の目安は次のとおりです。
| 内容 | 費用の目安(税抜) | 日数 |
|---|---|---|
| スタッドボルト1本の除去(標準的な深さ) | 数千円〜5万円程度 | 通常1週間前後 特急2〜5日 |
| 逆タップ・エキストラクターまで折れている | 状態により加算 | 通常1週間前後 特急2〜5日 |
| 同じ部品で複数本 | 本数と段取りで変動。まとめたほうが1本あたりは割安 | 本数によりご相談 |
| 抜いたあとのねじ山の復旧・ヘリサート | 別途お見積り | あわせてご相談ください |
費用が上がりやすいのは、次のような状態です。どれも手で取ろうとした結果として起きることが多く、最初に相談いただいた場合より作業が増えます。
- 逆タップやドリルの刃が、ボルトの中に折れて残っている
- 下穴が中心から片寄り、ねじ山の一部まで削れている
- 溶接の盛りや焼けが、ボルトのまわりに残っている
- 穴の径に対して深く、細い電極を長く使う必要がある
- 部品が大きく、加工機への固定に手間がかかる
- 同じ部品の中で、折れた位置が何か所にも分かれている
整備工場に頼む場合との違い。車両に付いたままの作業は、部品の脱着の工賃がかかります。当社は車両からの脱着は行わず、外した部品だけをお預かりします。脱着は整備工場またはご自身で、ボルトの除去は当社で、と分けると、工具が届かず取れなかった場合にも作業がむだになりません。
取れないと判断した場合は、その理由をお伝えします。写真の段階で難しいと分かれば、送っていただく前にお答えします。
依頼先を選ぶときに確認すること
折れたスタッドボルトの除去は、どこに頼んでも同じ結果になる作業ではありません。依頼先を探している方が確認すべき点を、当社のことも含めて率直に挙げます。
| 自社に放電加工機があるか | 外注に回している場合、日数が読めず、途中の相談もできません。当社は自社工場で加工しています。 |
| 写真だけで可否を答えてくれるか | 現物を送らないと何も言えない先は、判断に時間がかかります。写真で答えられるかどうかは、経験の量に比例します。 |
| 取れない場合の扱いを先に言うか | 「やってみないと分からない」で預けると、費用の話が後回しになります。当社は取れないと判断した時点で、理由をお伝えします。 |
| 抜いたあとの復旧まで相談できるか | 抜いてもねじが使えなければ意味がありません。ヘリサートなどの復旧方法まで含めて話せる先を選んでください。 |
| 期日を先に確認してくれるか | 車検や納車の日程がある場合、間に合うかどうかを最初に言える先でないと困ります。 |
放電加工で対応できる部位
放電加工機に載る大きさの部品であれば、自動車・バイク・産業機械を問わず対応します。形彫放電加工機の加工範囲は、最大1,200×800×450mmです。
エキゾーストマニホールド
排気の熱を最も受ける部位です。マニホールドを留めるスタッドボルトや、フランジ側に折れ込んだボルトを除去します。
マフラーのフランジ
錆で細ったボルトが折れやすい部位です。フランジやパイプの継ぎ目に残ったボルトも、部品単体で送っていただければ対応します。
シリンダーヘッド
アルミのヘッドに鉄のスタッドボルトが折れ込んだ状態です。ドリルで追うとアルミ側が負けるため、放電加工が最も効く部位です。
ターボチャージャーまわり
タービンハウジングとの取り付け部は、熱による固着が特に強い場所です。耐熱鋼のボルトでも、硬さに関係なく加工できます。
バイクのエキパイ取り付け部
エキゾーストパイプを留めるスタッドボルトです。小さなエンジンほど肉が薄く、ねじ山を残して抜く精度が求められます。
産業機械・発電機のボルト
エンジン以外でも、熱と腐食で固着したボルトは同じ方法で除去できます。大型の部品は、寸法をお知らせください。
抜いたあと、ねじ穴をどうするか
スタッドボルトは、抜いたあとに新しいボルトを入れて使います。ねじ穴の状態に応じて、次のいずれかをご提案します。触る前にご相談いただくほど、表の上のほうで済むことが多くなります。
| ねじ穴の状態 | 復旧方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| めねじが無傷で残っている | そのまま使う | タップでさらうだけ。いちばん安く済みます |
| 山が部分的に潰れている | タップを立て直す | 同じ呼び径のまま復旧できることがあります |
| 山が失われている | ヘリサートを入れる | 下穴を広げてコイルインサートを入れ、元の呼び径に戻します |
| ヘリサートも入らないほど広がった | オーバーサイズにする | 相手の部品やボルトの変更が必要になります |
ヘリサートの下穴の寸法は、ヘリサートの下穴径・図面指示の早見表にまとめています。
次に折らないために
新しいスタッドボルトを入れるときに少し手をかけるだけで、次に外すときの苦労が大きく変わります。具体的な締め付けトルクや部品の指定は、車両や機械の整備書に従ってください。
焼き付き防止剤を塗る
ねじ山に耐熱の焼き付き防止剤を薄く塗ってから組み付けます。熱でねじ山どうしが固着するのを防ぎ、次に外すときの力が小さくて済みます。
締め付けは規定のトルクで
締めすぎると、ボルトが伸びたまま熱を受け続け、折れやすくなります。トルクレンチを使い、整備書の値で締めてください。
外す前日に、潤滑剤をしみ込ませる
次に外す予定があるなら、前日に浸透潤滑剤を吹いておきます。冷えた状態で一気に回さず、少しずつ動かすのが基本です。
写真の撮り方と、送るときに同梱するもの
全部そろっていなくても構いません。可否の判断は、折れた部分の写真が1枚あればできます。
- 折れた部分に寄った写真(真上から1枚)
- 部品全体が分かる写真(定規を一緒に)
- ボルトの呼び径(M8、M10など)が分かれば
- 車種・エンジン型式、または機械の名称
- これまでに試した方法(ドリル・逆タップ・溶接など)
- 逆タップやドリルの刃が中に残っているかどうか
- 希望の納期(車検や納車の予定日)
- ねじ山の復旧も希望するかどうか
ご依頼の流れ
- STEP 01写真を送るお問い合わせフォームから、折れた部分の写真を添付してください。
- STEP 02可否と費用の目安を返信営業時間内であれば当日中にお返しします。この時点で費用はかかりません。
- STEP 03部品を送る外した部品だけを宅配便で。割れ物と同じ梱包で十分です。持ち込みもできます。
- STEP 04除去して返送除去後の状態を写真でご報告し、返送します。
よくあるご質問
エンジンに付いたままでも直せますか?
放電加工機に載せる必要があるため、部品を外した状態でお預かりします。エキゾーストマニホールドやマフラーのフランジは単体で、シリンダーヘッドに折れ込んでいる場合はヘッドを外して送ってください。車両からの脱着は、整備工場またはご自身でお願いしています。
ナットを溶接して回す方法で取れませんでした。それでも対応できますか?
対応します。溶接の盛りや焼けが残っていても、放電加工は材料の硬さに関係なく加工できます。溶接の熱でアルミの母材が傷んでいる場合は、抜いたあとのねじ穴の復旧方法もあわせてご提案します。
逆タップ(エキストラクター)が中で折れてしまいました。
取れます。逆タップは焼入れされた硬い工具で、ドリルではほとんど削れません。放電加工なら、スタッドボルトと逆タップをまとめて溶かして取り除けます。これ以上回したり叩いたりせず、そのままの状態で送ってください。
費用はいくらくらいかかりますか?
ボルト1本の除去で、数千円から5万円程度(税抜)が目安です。ボルトの径と深さ、材質、部品の大きさ、段取りの手間で変わります。写真を1枚送っていただければ、営業時間内は当日中に目安をお返しします。
送ってから何日で戻ってきますか?
通常は1週間前後、特急の場合は2〜5日が目安です。車検や納車の日程が決まっている場合は、ご相談の時点で期日をお知らせください。間に合うかどうかを先にお答えします。
抜いたあと、ねじ山が傷んでいたらどうなりますか?
状態に合わせて復旧方法をご提案します。山が残っていればタップでさらうだけで使えます。山が失われている場合は、ヘリサート(コイルインサート)で元の呼び径に戻す方法があります。
あわせて読みたい
折れた部分の写真を、1枚送ってください。
取れるかどうかと費用の目安を、営業時間内なら当日中にお返しします。触る前の状態が、いちばん安く確実に直せる状態です。

