放電加工を外注する際、最も気になるのが「どれくらいの精度が出るのか」「表面はどの程度の仕上がりになるのか」という点ではないでしょうか。
この記事では、放電加工の寸法精度と面粗度(表面粗さ)を、形彫放電加工とワイヤー放電加工それぞれについて具体的な数値とともに解説します。
放電加工の寸法精度
形彫放電加工の寸法精度
| 加工条件 | 達成可能な精度 |
|---|---|
| 荒加工(大電流・高速加工) | ±0.02〜0.05mm程度 |
| 仕上げ加工(低電流・微細放電) | ±0.01mm程度 |
| 超精密仕上げ | ±0.01mm程度(条件次第) |
形彫放電加工の精度は、放電ギャップ(電極とワーク間の隙間)の制御精度に依存します。放電ギャップは加工条件(電流値・パルス幅・放電時間など)によって変化し、仕上げ加工では数μm〜十数μm程度になります。この放電ギャップを正確に見込んで電極寸法を設計するノウハウが、最終的な加工精度を決定します。
ワイヤー放電加工の寸法精度
| 加工条件 | 達成可能な精度 |
|---|---|
| 1st カット(初回切断) | ±0.01〜0.03mm程度 |
| 2nd カット(セカンドカット) | ±0.01mm程度 |
| 3rd カット以降(仕上げカット) | ±0.01mm程度 |
ワイヤー放電加工では、同じ輪郭を複数回に分けてカットすることで精度を高めます。1st カットで粗加工し、2nd・3rd
カットで仕上げ面を少しずつ追い込んでいくイメージです。カット回数が多いほど精度は向上しますが、加工時間(=コスト)も増加します。
面粗度(表面粗さ)の実力
面粗度とは
面粗度(表面粗さ)は、加工面のミクロな凹凸の程度を表す指標です。JIS B 0601で定義される算術平均粗さRaが最も広く使われます。Raの数値が小さいほど、表面が滑らかであることを意味します。
放電加工面の面粗度
| 加工条件 | 形彫放電加工 Ra | ワイヤー放電加工 Ra |
|---|---|---|
| 荒加工 | Ra 10〜25μm | Ra 3〜5μm |
| 中仕上げ | Ra 1〜5μm | Ra 1〜2μm |
| 仕上げ | Ra 0.3〜1μm | Ra 0.3〜0.8μm |
| 鏡面仕上げ | Ra 0.1μm以下(可能) | Ra 0.2μm程度(限界に近い) |
形彫放電加工は、仕上げ条件を追い込むことで鏡面に近い表面(Ra 0.1μm以下)を実現できます。これは、放電エネルギーを極限まで小さくし、微細な放電痕(クレーター)の深さを抑えることで達成されます。
放電加工面の特徴
放電加工面には、切削加工面とは異なる特有の特徴があります。
- 放電痕(クレーター):放電加工面はランダムな位置に生じた微細なクレーターの集合体です。切削加工の規則的な加工痕とは異なり、方向性のない等方的な表面が得られます
- 白層(再鋳造層):放電により溶融した金属の一部がワーク表面で急冷凝固し、薄い白い層(数μm〜数十μm程度)を形成します。この層は母材より硬度が高いですが、靭性が低くマイクロクラックを含むことがあります
- 熱影響層:白層の下には、熱による組織変化(焼戻し等)を受けた層が存在します。通常は数十μm程度の厚さです
精度を左右する6つの要因
①電極の精度(形彫の場合)
形彫放電加工の精度は電極の精度で決まります。電極の寸法誤差はワークにそのまま転写されるため、電極は最終製品と同等以上の精度で製作する必要があります。
②放電ギャップの安定性
加工液の状態(温度・汚れ・濃度)、加工屑の排出状態により放電ギャップが変動します。加工液管理が不十分だと精度が低下します。
③加工機の精度と剛性
加工機自体の位置決め精度・繰り返し精度・テーブルの剛性が基盤となります。最新の放電加工機は位置決め精度0.001mm以下を実現しています。
④温度管理
ワークと加工機の熱膨張が精度に影響します。高精度加工では、加工液の温度制御や恒温環境での加工が重要です。
⑤電極消耗の補正(形彫の場合)
形彫放電加工では加工中に電極も消耗します。電極消耗率を正確に把握し、加工深さの補正を行うことが精度維持のポイントです。
⑥振動と外部環境
微細加工では、工場の振動(隣接する加工機や搬送設備の振動)が精度に影響することがあります。
用途に応じた精度指定のポイント
必要以上に高い精度を指定すると、コスト増と納期延長につながります。用途に合わせた適切な精度指定が重要です。
| 用途 | 推奨精度 | 推奨面粗度 |
|---|---|---|
| プレス金型(一般) | ±0.01mm | Ra 1〜3μm |
| プレス金型(精密) | ±0.01mm | Ra 0.5〜1μm |
| プラスチック金型キャビティ | ±0.01mm | Ra 0.5〜1μm(シボ加工面は別途) |
| 歯車・スプライン | ±0.01mm | Ra 0.5〜1.5μm |
| タップ折れ除去 | ネジ山保護が主目的 | 面粗度は問わない場合が多い |
その公差・面粗さ、放電加工で出せるか
図面の指示が放電加工の得意な範囲に入っているかどうかで、費用も納期も大きく変わります。発注前に確認しておくと、後戻りがありません。
問題なく出せる範囲
- ・形彫放電加工で±0.01mmクラス
- ・ワイヤー放電加工で±0.005mmクラス
- ・仕上げ面Ra0.1μm程度まで
- ・焼入れ後の材料でも精度は落ちない
先に相談してほしい指示
- ・ピン角(R0)の指示。原理上Rが残ります
- ・±0.01mmより厳しい公差。研磨仕上げが前提になります
- ・必要以上に細かい面粗さ指示。加工時間が跳ね上がります
- ・全面に同じ精度を要求している図面
図面を送れば、出せるかどうかをお答えします。
公差と面粗さの指示を見て、そのまま出せるか・研磨が必要か・どこを緩めれば安くなるかまでお伝えします。面粗さを1ランク緩めるだけで加工時間が大きく変わることも珍しくありません。図面がなければ、形状と要求精度をお知らせください。
判定は無料
図面1枚でOK
当日中に返信
営業時間内の受付分
コスト提案つき
緩められる箇所を指摘
営業電話なし
問い合わせ後も
「精度が出る」と「精度が続く」は別の話
カタログに書かれた精度は、条件を整えた1個目の話であることが少なくありません。発注する側が本当に知りたいのは、「100個作って、100個とも同じか」のはずです。
| 見るべき指標 | 何を表すか | なぜ発注前に確認すべきか |
|---|---|---|
| 単発の寸法精度 | 1個作ったときに、狙った寸法にどれだけ近いか | カタログ値はここ。これだけでは量産の判断ができません |
| 繰り返し精度 | 同じ条件で何個作っても、ばらつきがどれだけ収まるか | 量産で効くのはこちら。ロット内でのばらつきが品質を決めます |
| 再現性 | 日を空けて、別の日に作っても同じものが出るか | 継続発注では必須。条件が記録されていないと再現できません |
| 面粗さの安定 | 同じ面粗さが、加工面のどこでも出ているか | 深い形状ほど、奥と手前で差が出やすくなります |
当社は加工条件を記録して残します。「あのとき、どの条件で加工したか」が残っていなければ、次に同じものは作れません。繰り返し発注いただく部品ほど、この記録が効いてきます。2回目以降は条件出しの手間が減るので、納期も安定します。
公差の指定は「厳しくすればいい」ものではありません
図面に一律で厳しい公差を入れると、費用と納期だけが上がって、機能は良くなりません。放電加工では特に、公差の入れ方が費用を大きく変えます。
効かせる場所を絞る
実際に相手部品と合う面だけを厳しくし、他は一般公差にする。これだけで費用が変わります。どこが合わせ面かを図面に書いていただけると、そこに手間を集中できます。
面粗さは用途で指定する
数値が分からなければ「型として使う」「摺動する」「見える面」だけで構いません。用途が分かれば適切な条件を選べます。とりあえず一番細かく、が最も高くつきます。
隅Rを現実的に決める
放電加工では隅に必ずRが残ります。R0指示は成立しません。逆に、許容できるRを図面に書いていただければ、そこに合わせて最も効率のよい電極を作れます。
基準面をはっきりさせる
どこを基準に測るかが決まっていないと、こちらの測定値と御社の測定値が食い違います。基準面の指示があれば、その基準で加工し、その基準で測ります。
納品前に、どう確かめているか
「精度が出ています」という言葉だけでは、発注の判断はできません。何をどう確かめて出しているかをお伝えします。
機上での確認
加工機に取り付けた状態で位置と寸法を確認します。外してから測って違っていたのでは、やり直せません。
取り外し後の実測
マイクロメータ・ノギスによる寸法測定を行います。測定値のご提出も可能です。
加工条件の記録
どの条件で加工したかを残します。次回の再現と、問題が出たときの原因追跡のためです。
三次元測定が必要な場合
三次元測定機による成績書が必須の案件は、測定方法を事前に取り決めて対応します。ご相談ください。
その図面の公差、本当に出せるかどうかを先にお答えします。「たぶん大丈夫」で受けて、あとから謝ることはしません。出せない公差は、受注前にはっきりお伝えします。そのうえで、研磨を組み合わせるか、公差の入れ方を変えるか、代わりの方法をご提案します。
まとめ
放電加工は、形彫・ワイヤーともに±0.01mm以下の高精度を実現できる加工技術です。面粗度も仕上げ条件を追い込めばRa
0.1μmレベルの鏡面に近い表面が得られます。
精度は加工条件だけでなく、電極の品質・加工機のコンディション・加工液管理・温度管理など、工場の総合的な技術力に左右されます。

放電加工とは何か?基本原理から種類・メリット・用途まで初心者にもわかりやすく解説。形彫・ワイヤー・細穴の違いも紹介。
その加工、放電で受けられるかどうかを先にお答えします。図面か現物のスマホ写真1枚をお送りいただければ、受けられるか・いくらか・いつ出せるかを営業時間内は当日中にお返しします。1個から量産まで、出せない公差は受注前にはっきりお伝えします。土日祝も稼働しています。
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