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形彫放電加工とワイヤー放電加工の違い|特徴・得意分野・使い分けを徹底比較

「放電加工を依頼したいけど、形彫とワイヤーのどちらを選べばいいかわからない」——そんなご質問をいただくことがよくあります。

形彫放電加工とワイヤー放電加工は、どちらも放電を利用した加工技術ですが、原理・得意形状・精度・コストが大きく異なります。選び方を間違えると、コストが無駄に膨らんだり、そもそも加工不可能だったりすることもあります。

この記事では、両者の違いを5つの軸で比較し、「どんな加工にはどちらを選ぶべきか」を具体例とともに解説します。

目次

基本の違い|加工原理を比較

形彫放電加工(シンカーEDM / Die-sinking EDM)

目的の形状に加工した電極(銅・グラファイト等)をワークに押し込むように放電させ、電極の形を「反転」してワーク上に再現する加工方法です。電極の形がそのままワークの凹形状として転写されるため、「彫刻」のようなイメージです。

加工液:灯油系(油性加工液)が一般的。仕上げの面粗度に優れます。

ワイヤー放電加工(ワイヤーカットEDM / Wire EDM)

直径0.05〜0.3mm程度のワイヤー(黄銅線やタングステン線)を電極として張り渡し、ワイヤーとワークの間で放電を発生させながらワークを切断する加工方法です。糸鋸で板材を切り出すイメージです。

加工液:脱イオン水(水性加工液)が一般的。放電ギャップの冷却と絶縁回復を担います。

5つの軸で徹底比較

①得意な形状

比較項目 形彫放電加工 ワイヤー放電加工
3D形状 ◎ 自由な3次元形状を加工可能 △ 基本的に2次元の輪郭形状のみ(テーパーカットは可能)
止まり穴 ◎ 得意。深穴350mm以上の実績あり × 不可(貫通形状のみ)
輪郭形状 △ 可能だが効率はワイヤーに劣る ◎ 得意。複雑な輪郭を高精度に切り出せる
微細スリット △ 電極製作が難しい場合あり ◎ ワイヤー径+放電ギャップ分(約0.1mm幅〜)のスリット加工が可能
リブ・溝 ◎ 深い溝やリブの加工に最適 ○ 貫通する溝なら切り出し可能
内歯車 △ 可能だが電極コストが高い ◎ 得意。歯車のプロファイルを正確に切り出せる

結論:3Dの凹形状や止まり穴は形彫、2Dの輪郭切り出しはワイヤーが適しています。

②加工精度と面粗度

比較項目 形彫放電加工 ワイヤー放電加工
寸法精度 ±0.005mm(5μm)程度 ±0.002mm(2μm)程度
面粗度 Ra0.1μm程度(鏡面仕上げ可能) Ra0.2μm程度
コーナーR 電極形状に依存。鋭いコーナーを再現可能 ワイヤー半径分のRが残る(最小R0.03mm程度)

結論:寸法精度はワイヤーがやや上。面粗度は形彫が仕上げ加工で鏡面に近い表面を実現できます。コーナーの鋭さは形彫が有利です。

③コスト構造の違い

コスト項目 形彫放電加工 ワイヤー放電加工
電極コスト 必要(銅・グラファイト電極を製作) 不要(ワイヤーは消耗品として比較的安価)
セットアップ 電極製作+位置決めに時間がかかる プログラム入力+位置決めで比較的短い
加工時間 加工体積に比例。大きい凹形状は時間がかかる 切断長に比例。板厚が厚いと時間がかかる
小ロット 電極コストの割合が大きく単価は高め 電極不要で単品・小ロットに有利
リピート 電極を再利用できればコストダウン プログラム再利用で安定したコスト

結論:小ロット・試作ではワイヤーがコスト有利。電極を再利用できるリピート品では形彫のコストパフォーマンスが向上します。

④加工可能な材料

どちらも導電性素材であれば硬度に関係なく加工可能です。焼入れ鋼(HRC60以上)、超硬合金、チタン合金、インコネルなどの難削材にも対応できます。

ただし、形彫放電加工では電極材質の選定が重要です。加工対象に応じて銅、グラファイト、銅タングステン、銀タングステンなどの電極材を使い分ける必要があり、この選定ノウハウが加工品質を左右します。

⑤主な用途

用途 形彫放電 ワイヤー放電
金型キャビティ加工
パンチ・ダイの輪郭加工
深穴・止まり穴 ×
歯車・スプライン
タップ・ドリル折れ除去
金型補修・寸法再生
試作品の切り出し
精密スリット加工

こんなときはどちらを選ぶ?|ケース別判断ガイド

形彫放電加工を選ぶべきケース

  • 金型のキャビティ(凹形状)を加工したい
  • 止まり穴や深穴を加工したい
  • タップやドリルが折れて抜けない
  • 3次元の複雑形状を再現したい
  • 金型の寸法が変わったので修正(寸法再生)したい
  • 鏡面に近い面粗度が必要

ワイヤー放電加工を選ぶべきケース

  • 板材から精密な輪郭を切り出したい
  • パンチやダイの金型部品を製作したい
  • 歯車やスプラインのプロファイルを加工したい
  • 微細なスリットや溝を加工したい
  • 試作品を1個だけ素早く作りたい

両方使うケース

実際の金型製造では、ワイヤー放電でパンチ・ダイの輪郭を切り出し、形彫放電でキャビティの凹形状を仕上げるというように、両方を組み合わせて使うことが一般的です。

まとめ

形彫放電加工とワイヤー放電加工は「同じ放電加工」でも得意分野が全く異なります。3D凹形状・止まり穴・深穴なら形彫、2D輪郭・切り出しならワイヤーが基本的な使い分けの原則です。

「どちらに出せばいいかわからない」という場合は、図面をお送りいただければ最適な加工方法の提案からお手伝いします。

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