旋盤・ブローチで不可能な「止まり穴」への
六角穴・スプライン加工技術論
刃物の逃げ場がない袋小路形状や、ブローチ盤が使用できない難削材への異形穴加工。設計段階で「加工不可」と判断される形状を、放電加工(EDM)の転写技術がいかに解決するか。その技術的根拠と設計メリットを詳解する。
この記事の要点(Executive Summary)
- 「逃げ溝(アンダーカット)」は不要: 放電加工は刃物を使わないため、止まり穴の底ギリギリまでストレートに加工可能。
- 「応力集中」の回避: 逃げ溝によるシャフトの強度低下を防ぎ、部品の小型化・高剛性化に貢献。
- 「超硬・難削材」への適用: HRC90を超える超硬合金やインコネルに対しても、精度を落とさず複雑形状を形成。
- 「位相」の完全同期: 外径ギアと内径スプラインの角度合わせなど、複合的な位置決めが可能。
なぜ、従来の切削工法では不可能なのか
通常、六角穴やスプライン加工には「ブローチ盤」や「シェーパー(形削り盤)」が用いられます。しかし、これらの工法は物理的な刃物を往復運動させるため、以下の致命的な制約が発生します。
| 比較項目 | 旋盤・回転工具 | ブローチ・シェーパー | GAP.EDMの放電加工 |
|---|---|---|---|
| 加工原理 | 刃物の回転切削 | 刃物の直線引き抜き | 電極形状の非接触転写 |
| 止まり穴 (袋小路) | × 角穴は加工不可 | × 刃物が底に当たる | ◎ 底付き形状が可能 |
| 逃げ溝 (ヌスミ) | – | × 必須 (強度低下の要因) | ◎ 不要 (設計自由度UP) |
| コーナーR | × 大きなRが残る | △ 刃物形状に依存 | ◎ R0.05以下のピン角 |
| 対応硬度 | △ HRC50程度まで | △ 専用刃物が高額 | ◎ 超硬(HRC92)も可 |
設計の自由度を拡張する4つの技術
ブローチ加工では刃物を抜くために必須となる「逃げ溝(アンダーカット)」は、シャフトの断面積を減少させ、応力集中の原因となります。放電加工なら溝が不要なため、軸の太さを維持したまま有効嵌合長を確保でき、部品のダウンサイジングや強度アップに直結します。
JIS規格外の特殊なスプラインや、海外規格のインボリュートセレーションも対応可能です。高価なブローチ刃物を特注する必要がなく、電極(グラファイトや銅タングステン)をNC加工で製作するため、イニシャルコストを大幅に抑えつつ、試作1個から対応できます。
回転工具では物理的に不可能な「ピン角(Rゼロに近い状態)」も、放電加工なら実現可能です。電極のエッジを鋭利に仕上げ、さらに電極を微細に揺らす「揺動加工(オービタル)」で側面ギャップを制御することで、R0.05以下のコーナー精度を出せます。
「外径のギアの山と、内径のキー溝の角度を完全に一致させたい」。このような位相合わせも、独自の割り出し治具と測定技術により、ミクロン単位で制御します。ワイヤーカットと形彫り放電の複合加工により、同軸度と位相精度を保証します。
技術Q&A(Technical FAQ)
「その形状、加工可能か?」を即答します。
図面(PDF/DXF等)をお送りいただければ、最適な電極設計とコストを最短3時間で解析・回答します。
「逃げ溝は本当に不要か?」といった設計段階からの技術相談も歓迎します。

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